野村克也の組織論から考える|主任が感じる「組織を動かす難しさ」

管理職うんちく

野村克也の組織論から考える|主任が感じる「組織を動かす難しさ」

管理職をしていると、たまに思います。

伝えた。

説明した。

仕組みも作った。

なのに、なぜか動かない。

なんだこれ。

今回は、野村克也さんが残した組織づくりや人材育成の考え方を、自分の管理職経験と照らし合わせて考えてみます。

ただし、これは「管理職が部下をどう動かすか」という上から目線の話ではありません。

私自身も、良かれと思って手を出しすぎるし、任せたら任せたで不安になるし、正解だと思ったことが相手にとっては正解ではなかったりします。

管理職、無理ゲー。

でも、野村さんの組織論を知ると、「ああ、だから現場でこうなるのか」と少し見え方が変わりました。

組織運営について考えるシュニンニンのイラスト
組織は、命令すれば動く機械ではありません。ここが難しい。

結論:人を責める前に、組織の見方を変える

最初に結論です。

組織が思ったように動かないとき、すぐに「人の問題」にしたくなります。

主体性がない。

考えていない。

言ったことが伝わっていない。

もちろん、個人の課題がまったくないとは言いません。

でも、野村さんの組織論を自分の現場に置き換えてみると、管理職側にも問いが返ってきます。

その人が考えられる環境になっているか。

その人の武器を見つけているか。

その人が活きる役割を考えているか。

これ、なかなか厳しい。

部下にだけ矢印を向けていたつもりが、気づいたら主任の胸元にも矢印が刺さっている。

痛い。

でも、その痛さが大事なのかもしれません。

野村克也の組織論は、病院の主任にも刺さる

野村克也さんというと、「ID野球」「野村再生工場」「ぼやき」といった言葉を思い浮かべる人も多いと思います。

でも、著書や野村さんの指導を振り返った資料を読んでいくと、その根底には「限られた戦力をどう生かすか」「選手自身にどう考えさせるか」という考え方が流れています。

特に私が管理職として引っかかったのは、こんな視点でした。

  • リーダー自身も成長し続ける
  • 人の長所を見つけ、適材適所で生かす
  • 全員に同じ役割を求めない
  • 目に見える能力だけでなく、観察・情報分析・状況判断などの「無形の力」を重視する
  • 選手自身が根拠を持って考えられる状態をつくる
  • 結果だけではなく、そこに至る過程も見る

野球の話として読むと、名監督のリーダー論です。

でも、病院の主任として読むと、普通に胃が痛い。

なぜなら、これは「部下を変えろ」というより、「まずリーダー自身が人の見方を変えられるか」と問われているように感じるからです。

「伝えたのに伝わらない」は、能力の問題だけではない

「これ、お願いね」と伝える。

相手も「わかりました」と言う。

こちらは安心する。

しかし数日後、思っていた形と違う結果が出てくる。

え、そういう意味じゃなかったんだけど。

私も普通にやります。反省。

ここで管理職がやりがちなのは、「ちゃんと聞いてなかったのかな」と相手側の問題にしてしまうことです。

でも、野村さんが重視した「自分で考える」という視点から見ると、問いが変わります。

  • 目的は共有できていたか
  • どこまで任せるかを決めていたか
  • 相談してよい基準を伝えていたか
  • 相手の得意不得意を見ていたか
  • 完成形だけでなく、判断基準を共有していたか

つまり、「伝えた」は事実でも、「伝わる構造を作った」とは限らない。

ここが管理職として、かなり苦しいポイントです。

言葉を投げるだけなら簡単です。

でも、相手が自分で考えられるところまで整えるのは、別の仕事です。

「この人は何ができないか」ではなく「どこなら活きるか」

野村さんの組織論で、現場に一番つながると感じたのが適材適所です。

野村さんは、選手の長所を見つけ、それが生きるポジションや役割へ配置することで、多くの選手を再生させました。

病院でも、これは本当にあります。

研究が得意な人。

患者さんとの関係づくりがうまい人。

新人に説明するのがうまい人。

他職種との調整がうまい人。

細かいミスに気づける人。

現場を明るくする人。

でも管理職をしていると、つい「足りないところ」に目が行きます。

書類が遅い。

発表が苦手。

発信が少ない。

自分から動かない。

もちろん課題は課題です。

でも、課題だけを見ていると、その人の武器を見落とします。

だから最近は、

「この人は何ならチームに貢献できるだろう」

と考えるようにしています。

弱点を見る前に、武器を見る。

この順番だけでも、主任から見える景色はかなり変わります。

全員を4番打者にしようとしていないか

野村さんは、打順や守備位置によって役割が違い、監督の仕事は限られた人材を適材適所にはめていくことだと考えていました。

野球なら、全員が4番打者である必要はありません。

1番には1番の役割がある。

2番には2番の役割がある。

守備にも、走塁にも役割がある。

病院の現場でも同じです。

全員が研究発表を好きになる必要はありません。

全員が管理職を目指す必要もありません。

全員が教育係タイプである必要もありません。

でも、全員が何らかの形でチームに貢献できる状態は作りたい。

ここが難しい。

「みんな成長してほしい」と思うほど、知らないうちに自分の理想像へ寄せようとしてしまう。

これ、管理職あるあるだと思います。

私も普通にやります。反省。

でも本当は、成長の形は一つではない。

目立つ成長もあれば、チームを下支えする成長もある。

その違いを見られるかどうかが、主任の腕の見せどころなのかもしれません。

私がやりがちな失敗:手を出しすぎる

うーんと悩むシュニンニンのイラスト
任せたい。でも不安。主任あるあるです。

私は、わりと手を出しすぎます。

これはもう、認めます。

後輩が困っている。

資料が進んでいない。

研究計画が止まっている。

患者さんへの説明が少し不安。

そういう場面を見ると、つい口を出したくなります。

いや、出します。

その方が早いからです。

でも、「本人が考える」「自分で判断できるようになる」という視点で見ると、ここが怖い。

管理職が全部回収すると、短期的には整います。

でも長期的には、「困ったら主任が回収する」という動線ができてしまう。

助けることと、相手が考える機会を奪うことの境界線が、めちゃくちゃ見えにくい。

組織を動かす難しさは、ここにあります。

この「手を出しすぎ問題」は、別の記事でもかなり正直に書きました。

主任、また手を出しすぎる|“介入しすぎのはしご”に登った話

任せたら任せたで、不安になる

では、手を出さなければいいのか。

そんな簡単な話ではありません。

任せる。

見守る。

口を出しすぎない。

管理職本には、だいたい良い感じに書いてあります。

でも現場では、不安になります。

このままで大丈夫か。

患者さんに不利益はないか。

後輩が一人で抱えていないか。

期限に間に合うのか。

こちらの胃が先に整わなくなる。

だから大事なのは、「任せるか、任せないか」ではなく、「どこまで任せて、どこで確認するか」を決めることだと思います。

完全放置ではなく、途中で見えるポイントを作る。

答えを奪わず、状況を一緒に見る。

任せるとは、放置することではない。

この線引きを作ることも、主任の仕事なのだと思います。

「人が足りない」で止まらず、無形の力を見る

現場では、人が足りない問題があります。

これは本当にあります。

きれいごとではどうにもならない日もあります。

ただ、野村さんが重視していた考え方の一つに、「無形の力」があります。

投げる、打つ、走る、捕るといった目に見える能力だけではなく、観察、情報分析、洞察、状況判断など、目には見えにくい力を養い、それを勝利につなげるという考え方です。

病院に置き換えるとどうでしょう。

スタッフを急に増やすことはできません。

でも、情報共有の仕方を変えることはできる。

会議で決めることを明確にすることはできる。

新人が相談しやすい基準を作ることはできる。

研究や教育のノウハウを属人化させずに残すことはできる。

「足りないもの」だけを見ると、管理職は詰みます。

足がもげる。

でも、「今あるものをどう組み合わせるか」と見ると、少しだけ打ち手が残ります。

人を増やすことだけが、組織を強くする方法ではない。

これは主任として、かなり大事な視点だと感じました。

なぜ私は野村さんの考え方に引っかかるのか

ここで少しだけ、自分の話をします。

私のStrengthsFinder上位5つは、

  • 最上志向
  • アレンジ
  • 親密性
  • ポジティブ
  • 戦略性

これを改めて見たとき、野村さんの組織論に妙に引っかかる理由が少し分かりました。

最上志向は、弱点を平均まで引き上げること以上に、すでにある強みを見つけて伸ばしたくなる。

アレンジは、人、役割、仕事、資源を組み合わせて、よりよい配置を考えたくなる。

戦略性は、複数の選択肢の中から目的にたどり着く道筋を探したくなる。

つまり私は、「この人は何が足りないか」より、「この人はどこなら活きるか」を考えたくなるタイプなのだと思います。

だから私が野村克也さんと同じタイプだ、という話ではありません。

そんな大それた話ではない。

すぐ手を出すし、普通に迷います。

むしろ大事なのは、野村さんのマネジメントをそのままコピーすることではなく、構造だけ借りて、自分のやり方で実装することだと思っています。

私には親密性やポジティブもあります。

強い言葉で引っ張るより、関係性を作りながら、その人の武器を一緒に探す方が自分には合っている。

野村さんの構造を借りつつ、シュニンニンなりの温度でやる。

そこに、自分の管理職としての再現性がある気がします。

見え方が変わる問い:「人」ではなく「構造」を見る

野村さんの組織論を自分の現場に落とすなら、まず問いを変えることだと思います。

「この人はなぜ動かないのか」ではなく、

「動きにくくしている構造は何か」

と考えてみる。

現場で起きること 人の問題に見える解釈 構造として見る問い
依頼した仕事が進まない 主体性がない 目的・期限・相談基準は共有できているか
会議で意見が出ない 考えていない 意見を出してよい空気と論点があるか
同じミスが繰り返される 反省していない 判断プロセスを一緒に振り返れているか
一部の人に仕事が集中する できる人に頼りすぎ 役割分担と知識共有の仕組みがあるか
新しい仕組みが定着しない 変化を嫌がっている 現場の負荷・メリット・最初の一歩は見えているか

もちろん、個人の責任がゼロという話ではありません。

でも、全部を個人のやる気にすると、管理職は説教係になります。

それはつらい。

言われる側もつらい。

だから私は、人を責める前に、一度だけ構造を見る。

これを意識したいと思っています。

主任として明日からできる5つのこと

  1. 弱点より先に武器を見る
    「何ができないか」だけでなく、「何ならチームに貢献できるか」を観察する。
  2. 依頼の前に、目的を一文でそろえる
    「何をしてほしいか」だけでなく、「何のためにやるのか」を短く伝える。
  3. 任せる範囲と相談ラインを決める
    全部任せるのではなく、「ここまでは自分で、ここからは相談」を一緒に決める。
  4. 結果だけでなく、判断プロセスを見る
    うまくいったかだけでなく、「なぜそう考えたか」「次に再現できるか」を見る。
  5. できる人に仕事を集めすぎない
    早い人に頼るほど、組織全体の学習機会が減ることがある。

地味です。

でも、組織はたぶん地味なところからしか変わりません。

一発でチームが整う魔法があるなら、全管理職が今すぐ使っています。

それでも組織は思い通りにはならない

ここまで書いておいて、最後に身もふたもないことを言います。

それでも組織は、思い通りにはなりません。

人がいるからです。

それぞれに事情があり、価値観があり、疲労があり、タイミングがあります。

こちらが正しいと思った仕組みも、現場から見れば「また増えた仕事」かもしれない。

こちらが任せたつもりでも、相手には「丸投げ」に見えるかもしれない。

こちらが支援したつもりでも、相手には「信用されていない」と感じられるかもしれない。

管理職、無理ゲー。

だからこそ、完全にコントロールしようとするのではなく、

観察する。

ズレたら対話する。

失敗したら次の仕組みを考える。

その繰り返しなのだと思います。

サウナもキャンプも、毎回同じようには整いません。

気温、湿度、混雑、体調、家族の機嫌。

全部違う。

それでも、その日の楽しみ方を探す。

組織運営も、少し似ている気がします。

あわせて読みたい管理職記事

管理職そのもののしんどさについては、管理職の難しさって何?無理ゲーは今日も続くにも書いています。

「伝えたのに伝わらない」問題をコミュニケーションの側面から考えたのが、思い通りに動かない?それ、呪文が効いてないだけかもです。

そして「自分でやった方が早い」と思ってしまう主任には、主任、また手を出しすぎる|“介入しすぎのはしご”に登った話もどうぞ。

まとめ:組織を動かす前に、人と構造を見る

管理職をしていると、どうしても「どうやって人を動かすか」を考えがちです。

でも今回、野村克也さんの組織論を改めて考えてみて、その前にやることがあると感じました。

人を見る。

武器を見る。

役割を見る。

考えられる環境を見る。

結果だけではなく、プロセスと再現性を見る。

伝わらない。

仕組みが定着しない。

任せると不安。

手を出すと育たない。

これ、管理職をやっているとありますよね。

私も普通にやらかします。

でも、人を責める前に構造を見る。

弱点を直す前に武器を探す。

動かす前に、その人が動きやすい役割を考える。

それだけでも、現場の空気は少し変わる気がします。

組織って、なんだこれ。

でも、なんだこれと言いながら、明日も少し整えていく。

主任、今日も試行錯誤です。

参考にした資料

この記事では、野村克也さんの組織づくり・人材育成について、主に以下の著書・関連資料で確認できる考え方を参考にしました。

  • 野村克也『リーダーとして覚えておいてほしいこと』(PHP研究所、2020年)
  • 野村克也『理想の野球』(PHP研究所、2012年)
  • 野村克也『野村の結論』(プレジデント社)
  • 野村克也さんの指導・組織論を振り返ったNumber Web、GOETHE等の記事

特に「適材適所」「自分で考える野球」「無形の力」「リーダー自身の成長」といった考え方を、自分自身の病院での管理職経験に照らして再構成しています。

なお、この記事は野村克也さんの特定の一冊を要約したものではありません。野村さんの組織論をヒントに、現場の主任として感じていることを考察した記事です。

編集後記

この記事を書きながら、あらためて思いました。

管理職は、部下を動かす人というより、「その人が動きにくくなっている理由を一緒に探す人」なのかもしれません。

もちろん、毎回そんな余裕があるわけではありません。

私も焦って手を出して、あとで反省します。

それでも、「なぜ動かないんだ」と言う前に、「この人の武器は何だろう」「どこで詰まっているんだろう」と考えられる主任でいたい。

組織も自分も、一気には変わりません。

少しずつ整えていきます。

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組織も自分も、少しずつ整えていきます。

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